成層圏ってどこ?大気の層を元研究員がゼロから解説──空が青い理由・オゾン層・飛行機が飛ぶ高さの科学🌤

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1902年6月8日、フランスの気象学者テスラン・ド・ボールが気球を使った観測によって「成層圏」を発見しました。今日はその記念日です。

「成層圏」という言葉は聞いたことがあっても、「どの高さ?」「飛行機はそこを飛ぶの?」「オゾン層とどう違う?」といった疑問は意外と残りがちです。

今回は元研究員として、大気の層構造をゼロからわかりやすく解説します。「空はなぜ青いのか」という疑問への答えも、最後にご紹介します。

1902年当時、科学者たちは「上空に行けば行くほど気温は下がり続ける」と考えていました。ところがテスラン・ド・ボールが観測用気球を何度も打ち上げて気温を測定すると、高度約10kmを超えたあたりから気温の低下が止まり、むしろ上がり始めることを発見。

これが「成層圏」の発見です。「なぜここで気温が上がるのか?」──その謎は後にオゾン層が紫外線を吸収して加熱していることで説明されました。


大気の5層構造と高度・気温の変化 対流圏・成層圏・中間圏・熱圏・外気圏の5層と、それぞれの高度・気温変化・特徴を示した図解 外気圏 700km〜 宇宙空間へ 熱圏 80〜700km オーロラ・人工衛星・ISS 中間圏 50〜80km 流れ星が燃え尽きる層 成層圏 ← 今日の主役! 11〜50km オゾン層・ジェット機が飛ぶ高さ 気温:−56℃(下部)→ 0℃(上部) 対流圏 0〜11km 雲・天気・空気の80%が存在 気温:地表約15℃ → −56℃(上部) 地 表

気温の変化イメージ 気温 低 ← → 高 15℃ −56℃ −56℃ 0℃ −90℃ 最低 ↑下がる ↑上がる ↑下がる ↑上がる

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大気の5層を知ろう

0〜11km

対流圏──私たちが生きる層

地表から高度約11kmまで。空気の約80%が存在し、雲・雨・雪・台風などすべての天気現象が起きる層です。高度が上がるにつれ気温が下がり、最上部では約−56℃に。「対流」とは空気が上下に混ざり合う動きのことで、これが天気を生み出しています。富士山(3,776m)や旅客機の巡航高度(約10km)はここに含まれます。

11〜50km

成層圏──今日の主役、ジェット機が飛ぶ層

高度約11〜50km。オゾン層(高度約20〜35km付近)が存在し、太陽からの有害な紫外線を吸収しています。この吸収によって熱が発生するため、上に行くほど気温が上がるという対流圏とは逆の性質を持ちます。雲がなく常に快晴で、ジェット旅客機は燃費の良い成層圏下部(約10〜12km)を飛んでいます。気流が安定していて揺れが少ない点でも有利です。

50〜80km

中間圏──流れ星が燃え尽きる層

高度50〜80km。再び上に行くほど気温が下がる層で、最上部は約−90℃と大気圏で最も寒い場所です。宇宙から飛び込んでくる流れ星(隕石)が大気との摩擦で燃え尽きるのがこの層。「なんとなく空の上」というイメージの「流れ星」は、実はここで光を放っています。

80〜700km

熱圏──オーロラとISSの住処

高度80〜700km。太陽の電磁波や粒子線を直接吸収するため気温が数百〜数千℃に達しますが、空気が極めて薄いため体感温度はほぼゼロです。国際宇宙ステーション(ISS)は高度約400kmで周回しており、熱圏内にあります。またオーロラも熱圏で発生します。

700km〜

外気圏──宇宙との境界

高度700km以上。大気は極めて薄く、もはや「気体」というより「宇宙空間」に近い領域です。気体分子が地球の引力を振り切って宇宙空間に逃げ出していく境界であり、人工衛星の多くはここを周回しています。国際航空連盟(FAI)やNASAは高度100kmのカルマンラインを宇宙と大気の境界線と定義しています。

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「空はなぜ青いのか」──レイリー散乱の話


レイリー散乱と空が青い理由 太陽光が大気中の分子にあたってレイリー散乱し、青い光が強く散乱されて空が青く見える仕組みの図解

太陽

太陽光(白色光)

N₂ 大気分子 (N₂・O₂)

← 青い光 四方八方に強く散乱 → 空全体が青く見える

赤い光は直進 散乱されにくい → 夕焼けの赤の原因

空が青く見える理由 青い光は波長が短い(約450nm) 散乱強度は波長の4乗に反比例 → 青が赤より約5.5倍強く散乱 → 空全体が青く輝いて見える

夕焼けが赤い理由 太陽が地平線近くにある → 光が大気を長距離通過 → 青い光はすべて散乱されて消える → 残った赤・橙の光だけが届く

「空が青い理由」は、レイリー散乱と呼ばれる現象で説明されます。1871年にイギリスの物理学者レイリー卿が解明しました。

太陽光(白色光)が大気中の窒素・酸素分子にぶつかると、光は四方八方に散乱されます。このとき散乱の強さは波長の4乗に反比例するため、波長の短い青い光(約450nm)が赤い光(約700nm)よりも約5.5倍強く散乱されます。結果、空全体から青い光が降り注ぎ、空が青く見えます。

逆に夕焼けが赤いのは、太陽が地平線近くにあるとき光が大気を長距離通過するため、青い光がほぼすべて散乱されて消え、赤い光だけが残るからです。

また宇宙から見た空が真っ黒なのは、散乱させる大気分子がないため。これも同じ原理の裏返しです。

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オゾン層──地球生命を守る「盾」

成層圏の中でも特に重要なのがオゾン層(高度約10〜50km、最も密度が高いのは20〜35km付近)です。オゾン(O₃)は酸素原子3つからなる分子で、太陽からの有害な紫外線(UV-B・UV-C)を吸収して地上の生命を守ります。

1980年代以降、フロン類(クロロフルオロカーボン)によってオゾン層が破壊される「オゾンホール」が南極上空で毎年観測されるようになりました。これを受けて1987年に採択されたモントリオール議定書によりフロン類の製造・使用が規制され、現在はオゾン層の回復傾向が確認されています。

環境問題の解決策として国際条約が機能した数少ない成功事例として、科学者の間では高く評価されています。

✦ まとめ

  • 成層圏は1902年6月8日、気象学者テスラン・ド・ボールが気球観測で発見
  • 大気は5層構造:対流圏(天気)→ 成層圏(オゾン・飛行機)→ 中間圏(流れ星)→ 熱圏(ISS・オーロラ)→ 外気圏
  • 成層圏は上に行くほど気温が上がる特殊な層。オゾン層が紫外線を吸収して加熱しているから
  • ジェット旅客機が飛ぶのは成層圏下部(高度約10〜12km)。気流が安定していて燃費が良い
  • 空が青い理由はレイリー散乱。青い光は赤い光より約5.5倍強く散乱される
  • 夕焼けが赤いのは、長い大気を通過する間に青い光が散乱で消えてしまうから
  • オゾン層はモントリオール議定書により回復傾向。環境条約の成功事例
「成層圏」という言葉は教科書で一度は見るけれど、改めて考えてみると奥が深いですよね。元研究員として大気科学を振り返ると、地球の「空気の薄い皮一枚」が生命を守っているという事実に、いつも畏敬を感じます。

空が青いのも、飛行機が安定して飛べるのも、私たちが紫外線で焼かれずに生きられるのも、すべて成層圏とその仕組みのおかげです。

同じ6月8日の記事として、「海が世界経済を支えている──海底ケーブル・深海資源・海運入門」もあわせてどうぞ。

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