海が世界経済を支えている──海底ケーブル・深海資源・海運、知られざる”海の投資”入門




今日6月8日は世界海洋デー。地球の表面積の約71%を覆う海について、改めて考える日です。

「海」と聞くと魚や観光を思い浮かべがちですが、実は海は世界経済の根幹を支えるインフラです。世界貿易の約80%は海上輸送であり、私たちが今見ているインターネットも、国際通信の約99%は海底ケーブルで運ばれています。

知られざる「海の経済」を、元研究員の視点からひもといてみます。

約80%
世界貿易
海上輸送が担う割合。石油・食料・工業製品、ほぼすべてが船で運ばれる

約99%
国際通信
海底ケーブルが担う割合。衛星通信ではなく海底ケーブルが情報の大動脈

約500
海底ケーブル
世界に敷設された本数。総延長は約150万km=地球約37周分

これだけでも「海が止まれば世界が止まる」ということがわかります。6/7の記事で触れたホルムズ海峡封鎖が世界経済に与えた衝撃も、こうした背景があってこそです。

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① 海底ケーブル──情報の大動脈


海底ケーブルの断面構造と役割 海底ケーブルの断面構造(光ファイバーから外装まで)と主な数値を示した図解

海底ケーブル 断面構造

光ファイバー(コア) 信号を運ぶ中心部。ガラス製

絶縁体・銅管 給電用。中継器に電力を供給

スチールワイヤー 強度補強。海底の圧力に耐える

ポリエチレン外装 防水・保護。深海では薄型

外装アーマー(浅海部) 外径:約7cm。深海部はさらに細い

海底ケーブル

インターネットは海の底を走っている

YouTubeを見る、SNSに投稿する、株の注文を出す──これらすべての通信は、実は海底に敷設された光ファイバーケーブルを経由しています。衛星通信は遅延が大きいため、国際通信の約99%は海底ケーブルが担っています。

世界に約500本、総延長約150万km(地球約37周分)のケーブルが海底に張り巡らされており、数秒の遅延が大きな損失になる金融取引にも不可欠なインフラです。市場規模は2022年度の約3,940億円から2028年度には約4,780億円に拡大すると推計されています。

近年は地政学リスクも高まっています。台湾の離島周辺でのケーブル切断、NATOによるロシアの切断懸念、中国のケーブル切断装置の特許出願など──「情報インフラへの攻撃」は現代の新たな安全保障問題です。GAFAMも独自の海底ケーブルを積極的に敷設しており、海底ケーブルは「テック企業の新たな覇権争いの場」でもあります。

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② 深海資源──次の資源争奪戦は海の底


深海の主な資源とその含有物 マンガン団塊・コバルトリッチクラスト・熱水鉱床の3種類の深海資源の特徴を示した図解 マンガン団塊 水深4,000〜6,000m 含有:マンガン・ニッケル コバルト・銅・リチウム EVバッテリー材料を多く含む

熱水鉱床 水深800〜3,500m 含有:銅・亜鉛・金・銀 鉛・バリウムなど 海底火山活動で形成

コバルトリッチクラスト 水深800〜2,500m コバルトリッチクラスト層 海山の岩盤 含有:コバルト・マンガン 白金族・希土類元素 海山の斜面に形成

深海資源

次の資源争奪戦は「海の底」で起きる

EVシフト・半導体・再生可能エネルギーの普及に伴い、コバルトニッケルリチウムなどのレアメタル需要が急増しています。これらを大量に含む「宝の山」が深海に眠っています。

日本は排他的経済水域(EEZ)の面積が世界第6位(約447万km²)で、その海底には豊富な資源が確認されています。沖縄トラフの熱水鉱床や南鳥島周辺のマンガン団塊は注目を集めており、日本が「資源大国」になれる可能性を秘めています。

ただし深海採掘には環境破壊リスクも伴います。国際海底機構(ISA)が採掘ルールの整備を進めていますが、「採掘すべきか」の議論は現在も続いています。

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③ 海運──世界貿易の血液


世界の主要チョークポイント(海峡)と通過量 ホルムズ海峡・マラッカ海峡・スエズ運河・ドーバー海峡の位置と重要性を示した図 世界の主要チョークポイント(海峡) ホルムズ海峡 ペルシャ湾とオマーン湾の間 原油:世界の約20% 日本の輸入原油の93%が このルートを経由 2026年2月〜封鎖状態 マラッカ海峡 インド洋と南シナ海の間 世界貿易の約25% 日本の輸入の多くが このルートを通過 海賊・台湾有事リスク スエズ運河 地中海と紅海の間 世界貿易の約12% 欧州↔アジア最短ルート フーシ派攻撃で 2024年以降迂回増加 バブ・エル・マンデブ 紅海とアデン湾の間 LNG輸送の要衝 スエズとセットで 欧州向け航路を形成 フーシ派攻撃の標的

海運・チョークポイント

「チョークポイント」が世界経済の急所

世界貿易の約80%が海上輸送に依存しており、そのほとんどはチョークポイント(狭い海峡)を通ります。これらが封鎖・攻撃されると、世界経済に即座に影響が出ます。

2024年以降、フーシ派によるスエズ運河・バブ・エル・マンデブ海峡への攻撃が相次ぎ、欧州向け航路の迂回が増加。2026年のホルムズ封鎖は原油価格を約2倍に押し上げました。「チョークポイントリスク」は投資家が常に意識すべき変数です。

海運株(日本郵船・商船三井・川崎汽船など)はこうした地政学リスクに敏感に反応します。有事では運賃(コンテナ運賃指数:BDI)が急騰し、海運株が上昇する一方、素材・製造業は輸送コスト増でコスト増加に見舞われます。

🌊 まとめ

  • 世界海洋デーは1992年の地球サミットで提案、2009年に国連正式制定
  • 世界貿易の約80%は海上輸送、国際通信の約99%は海底ケーブルが担う
  • 海底ケーブルは世界500本・総延長150万km。GAFAMも独自敷設に参入
  • 深海にはEVや半導体に不可欠なレアメタルが眠る。日本のEEZには豊富な資源
  • ホルムズ・マラッカ・スエズなどチョークポイントは世界経済の急所
  • 海運株・エネルギー株・深海資源関連株は地政学リスクと密接に連動する
海は「環境問題の文脈」だけで語られがちですが、現代経済においては通信・物流・資源の三大インフラでもあります。投資家として中東情勢を追うとき、原油だけでなく「海そのもの」を経済インフラとして意識しておくと、見える景色が変わってきます。

今日は世界海洋デー。地球の7割を覆う海のことを、少しだけ深く考えてみてください。

同じ6月8日の記事として、「成層圏ってどこ?空が青い理由を元研究員が解説」もあわせてどうぞ。

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