今日6月1日は「牛乳の日」です。毎朝コップ一杯の牛乳を飲みながら、ふと思ったことがあります。「なぜ牛乳は白いのか?」元研究員として、この問いをちゃんと科学で答えてみたいと思います。
▲ 牛乳ちゃんの中身。カゼインミセルと脂肪球が光を散乱させて白く見える
なぜ牛乳は白いのか
白さの正体は「光の散乱」
牛乳の白さの主役はカゼインミセルと脂肪球の2つです。カゼインミセルは直径40〜300nm(平均200nm前後)のコロイド粒子で、牛乳1mLにおよそ15兆個も浮遊しています。
この粒子に光が当たると「ミー散乱」という現象が起き、光があらゆる方向に散乱されます。この散乱光が重なり合うことで、牛乳は白く見えます。
粒子のサイズが光の波長と同程度〜大きいときに起きる散乱現象です。牛乳のミセル(〜数百nm)はまさにこのサイズ帯。雲が白く見えるのとまったく同じ原理です。
面白い実験事実もあります。カゼインミセルからミネラルを除いて分解していくと、牛乳は最終的に黄緑色になります。これはリボフラビン(ビタミンB2)の色で、乱反射がなくなると本来の色が現れるためです。
カルシウムが吸収されやすい理由
| 食品 | カルシウム吸収率 |
|---|---|
| 牛乳・乳製品 | 約60% |
| 小魚 | 約30% |
| 緑黄色野菜 | 約18% |
牛乳のカルシウム吸収率が高い理由は2つあります。①カゼインが消化される際に生成されるCPP(カゼインホスホペプチド)がカルシウムの不溶化を防ぎます。②乳糖自体もカルシウム吸収を助ける働きを持っています。
乳糖不耐症とは何か
▲ 正常ルートと乳糖不耐症ルートの比較。腸くんが困っている
酵素が足りないだけで、病気ではない
「牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする」という方は多いと思います。これは牛乳アレルギーではなく、乳糖不耐症(乳糖不耐性)です。乳糖を分解する酵素「ラクターゼ」が少ないために起きます。
乳糖が小腸で分解されないと、大腸まで届いて2つの問題を引き起こします。①小腸の水分を引き寄せ(浸透圧上昇)→ 下痢。②大腸の腸内細菌が発酵しCO₂・メタンを産生 → 腹痛・ガス。
日本人に多い理由:進化の記録
乳糖不耐症の割合は地域によって大きく異なります。北ヨーロッパでは約5%に過ぎませんが、アジアの多くの地域では成人の約90%が乳糖不耐症とされています。
理由は農耕・牧畜の歴史の違いです。欧米では牧畜文化が早くから発展し、大人になってもラクターゼを出し続ける遺伝子変異が広がりました。日本人は農耕文化が中心だったため、この変異が広がる必要がありませんでした。
▲ MCM6遺伝子のたった1文字(CかTか)が、牛乳を飲めるかどうかを決める
たった1文字の遺伝子の違い
鍵となるのはMCM6遺伝子です。ラクターゼを作る本体「LCT遺伝子」の約13,910塩基上流に位置し、ラクターゼ産生の「スイッチ」を制御しています。
このSNP(一塩基多型)の13,910番目の位置がCかTかで運命が分かれます。C/C → 不耐症、C/T・T/T → 牛乳を消化できるという対応です。
ゲノムの中のたった1文字が、あなたが牛乳を飲めるかどうかを決めているのです。
まとめ
毎日何気なく飲む牛乳には、光の散乱・酵素・遺伝子という三層の科学が詰まっています。
- 白い理由 → カゼインミセルがミー散乱を引き起こすから(雲と同じ原理)
- カルシウムが吸収されやすい → CPPと乳糖が助けているから
- 乳糖不耐症 → 病気ではなく、祖先の食文化の記録
- 飲めるかどうか → MCM6遺伝子の1文字(CかTか)で決まる


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